day 30

この「トリスの落書き」は、DeadRunningのAシナリオ(街からの脱出)~Bシナリオ(船旅)の間の7日間を埋めるSSです。
物語の始まり~Aシナリオプレイ開始に至る「老医師の日誌」ともども、ゲームプレイのエッセンス程度にお楽しみいただければ幸いです。

・老医師の日誌(day 1 ~ day 7)
・トリスの落書き(day 29 ~ day 35)

 

 
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すごく あつい。

サムは ママにひっぱって あっちにいる。
パパが くれた おどうぐ ひとつだけ もってる。
つめたくて きらきらしてて だいすき。

ママは おこってる。トリスが わるいこだって。
きょうも あのひと きてる。ママとお話ししてる。
「やくそく」
いいこに してたら パパ くれよん また かってくれるかな?
あかいのが いいな。

サムが ほえてる。おこられちゃうから もう おかたづけ。

あれ? なんだか いい におい?

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「おかえり、セリーナ。どうだった?」
「あー、チャーリー。んとね、母親にすごい剣幕で怒られたー。最悪ーっ。
 トリスがすごい喜んでくれたからいいんだけどさー。」
「サラさんも大変みたいだね。」
「サラの診療所に通ってた子なんだよねー?
 そのせいか分からないんだけど嫌われてるみたいねー。」
「元気になるといいね。」
「大丈夫!セリーナちゃん特製チーズリゾットは風邪なんか一発なんだからっ。
 …今日のはとびっきりの効き目があるのよねー。」
「そ、そうだね。」
「セリーナ、手を動かせよ。」

相槌を打ちながらも手馴れた様子で荷物を運ぶチャーリーに対し、
セリーナもテキパキと片付けるが、話し始めるとつい手が止まってしまう。
片手を吊ったマスターの指摘はごもっともな話だ。

そうこうしながらも、さすがに二日目ともなれば、在庫の整理はずいぶんと進んだ。

カフェを出てあてがわれた船室に帰ろうとするチャーリーに声がかけられる。
「ん…チャーリー。
 ありがとね。これ後で食べてねー。それじゃ、また明日っ!」
振り返るチャーリーの眼前に突き出される小さいけど温かい包み。微かにチーズの匂いがする。
受け取ると同時に、彼女の元気の良さそのままにカフェの扉は閉じられてしまう。
「closed.」
大男に似つかわしい包を大事そうに抱え、カフェを後にした。

「セリーナ、閉めるぞ。」
「はいぃっ!?」
ゴソゴソとカウンター奥で作業していたセリーナの手元が滑ったのか、小さな破砕音がしてガラスが飛散る。
「あっ、あっ!…す、すぐ片付けて行きますーっ。」
「おう、待ってるぞ。」

「失敗したなあー。」
手早く片付けると、焼却行きの袋に詰めて持ち上げた。

 

 

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