day 29

この「トリスの落書き」は、DeadRunningのAシナリオ(街からの脱出)~Bシナリオ(船旅)の間の7日間を埋めるSSです。
物語の始まり~Aシナリオプレイ開始に至る「老医師の日誌」ともども、ゲームプレイのエッセンス程度にお楽しみいただければ幸いです。

・老医師の日誌(day 1 ~ day 7)
・トリスの落書き(day 29 ~ day 35)

 

 
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きのうは たいへん です。

トリスね 今 おふねに のってるの。
ママが お熱 ひいたら たんけんしていいって。
きょうは おとなしく パパがくれたご本で お絵かきしてなさいって。
パパは たいせつにしなさい って言うの。

パパは お薬もらいに きのう おいしゃさん 行った。
きのうも きょうも おちゅうしゃしたのに なんだかさむいの。
でも サムが くっついてくるので おふとん あたたかい。

パパが 帰ってきたら みんなで どこに行こう。
しかたないから サムも つれてってあげる とくべつだよ。

—–

親子にあてがわれた船室から看護師が出てくる。
あちこち補強され、雑多に物が運び込まれた船内は歩きにくそうだ。
清潔そうに見える看護服もよく見れば裾がほつれていたが、人々に向ける優しい笑顔は健在だった。

「なあ、サラちゃん、あの子悪いのかい?」
「あら、ノームさん。
 …とても珍しい病気なので。先生に処方していただいた薬はあるのですが、
 今朝から熱が出てきたらしくて。」
「かわいそうに。
 どうもあの母親は気に入らねえな…あの子、父親の連れ子なんだろ?」
「それぞれ事情はありますし…でも、できるだけ力になってあげたいですね。」

二人はしばらく黙りこむ。

「そういや、今朝方のあの光はなんだったんだろうな?」
「街…よりは北の方、シティ近くの工場で爆発でもあったんでしょうかね?」
「ま、考えても仕方ねえか…セリーナお嬢は元気かい?」
「ええ、妹ならカフェの整理してると思います。昨日慌てて運び込んだ食料がそのままですし。」
「そのうちまた一杯やれるのかな、へへへ」
「お酒ばっかりじゃ…ダメ…ですよ?」
「さて、仕事仕事…発電機見てくる途中だったわ」

挨拶がわりに手に持ったハンマーを振りながら去っていく。

「本当、かわいそうに…」

一人残ったサラはつぶやく。船内は薄暗く、ややうつむいたその表情はうかがえない。

 

 

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